ありの初穂のゲームブログ(原神)

原神考察、情報まとめ。モンド大好き。最推しはジン団長。2024/2/18再度改名 ワイン大好き。

『オタク用語辞典 大限界』読後の感想(原神ユーザーとして)。


 今回はまとめ考察ではなく、発売前に少し話題になっていた『オタク用語辞典 大限界』をkindle版で購入し一読してみた感想を軽く書きます。記事の投稿者は辞典はさておきサブカルチャーを扱った書籍は結構好きです。ただ、今回は残念ながら(特に本のタイトルに期待した人には)お勧めできる内容ではないです。内容を考えなければ(大学時代のオタ活やオタトークをまとめた同人誌を三省堂から出せるなんてすごい時代だなぁ)とさえ思ってしまいましたが。

 この本がどういうものかを端的に表すため、7ページの第1章扉にある「オタク」についての記載を引用します。

推しのために自身が持つありとあらゆるものをなげうつことができる者。推しの話題になると、突然、早口クソデカボイスになることでも知られる。「ヲタク」とも表記される。略して「オタ」「ヲタ」。

 決して文章自体は間違ってはいないかもしれないけど、「オタク」の定義としてはかなり偏りのある文章だと私は思います(個人の感想です)。このほかにも気になった事を書いていきます(少し個人的な愚痴も入るのでそこはご容赦下さい。)
(2023/11/27追記)記事中の文章を分かりやすくするため、全体的に修正しました。

「用例」が良く言えばリアルな言葉そのまま、悪く言えば痛いオタクの暴言

 正直全ての項目に書かれている「用例」は読むに堪えないものだと感じているので、もし興味のある方はぜひ公開されたサンプル等で一度目を通すことを強くお勧めします。この本の数少ない良い点を一つ挙げれば用語の「意味」の説明は比較的良く書かれているのではないかと思っています(あまり私がその界隈用語に疎くて間違った内容を認識していないのかもしれませんが…)。例えば自分があまり知らない項目を読んで「なるほど、そうなのか」と感心したので用例を読むと「〇〇は××だと思っている」という文章で「いやいや極一部はそうかもしれないがそうじゃないだろ」という突っ込みを入れてしまう。おそらく著者たちのリアルな会話、オタク発言なのだろうけど、それをそのまま用例として載せていたら、それはただの過激で痛いオタクの暴言でしかない。この点は本当に残念だと思います。
 

界隈用語が「界隈を愛好する者同士で用いられる日本語」なのかは甚だ疑問

 この本は締めの編者の記述で「界隈を愛好する者同士で用いられる日本語」をまとめた、という話なのだが、タイトルに「辞典」の名を使うには見立てが少し甘かったのでは?と私は感じました。この本を読むと「これ書いた人○○推し(担)なのかな?」と感じるところが多々あると思います。実際に筆者達には推しが決まっているだろうしそれをどうこう言うつもりもないけれど、本の内容としては「○○推し(担)が選んだ界隈用語」という枕詞が必要だと思いました。これが普通のサブカル本なら「私は○○というキャラクターが大好きで~」等の著者の主張が書いてあって読み手も「ああ、それならこの用語集になるよね」となるが、この本はタイトルと体裁のせいで著者の癖を公表できないし、偏った内容だから憶測は出来てしまうけど「著者は○○推し(担)」とはどこにも明言されていないから決めつけは良くないし、読み手はなんだかもやもやするのだと思います。
 さて原神界隈の用語についてですが、項目を見ると59項目と書かれているが数えてみても58個しかない……これってもしかして、最初の扉「原神」の説明文と、項目の「原神」→扉を参照で2カウントされている?これをダブルカウントすると一応59個となりました。こちらで独自に分類分け(ファミ通のニュースサイトでも書かれていた「けつみどり」「パインアメ」などの普通の用語、「俺が払うよ」は男性キャラに関連する用語等)してみると、正直言って女性キャラに関するものは厳密には4項目しかない。もう二つ「男女キャラ二人について示した」用語があるのでそれはそれぞれ0.5ずつ割り振りました。パーティ編成名はキャラ名がしっかり入っているものを除いて用語に入れています。また「非常食」はパイモンの事を書いているのですが、これを女性キャラ関連の括りにするのは自分の中で何か違うと思ったので旅人のジョークとして用語に入れました、入れさせて下さい。もし数え落としや分類間違いがあった場合は若干数値は変わると思うので大まかなものとして見て頂ければ幸いです。細かい内容は書けないのでとりあえずまとめてあるものの傾向だけは図に示したのが以下のグラフになります。

 著者の傾向から男性キャラについて多く書かれているとは予想していましたが、意外と原神用語がそれなりに書かれていました。
 ただ、「オープンワールド」の意味が、

オープンワールド [意味]キャラクターの肌が、がっつり見える状態。…(後略)

として書かれているのは普通に駄目だと思いました。原神はオープンワールドRPGなのだからその項目は俗語でなくてきちんとした内容を書くべきだと思いました。

 これを除けば武器の別称とか、個人的には頑張って書いている印象はあってそこまで用語説明は悪くないのかなと思いました(「おうるっく」「邪タル」等項目の偏りはかなり見受けられます)。関係性を表す用語で自分が受け付けないものがあったらやだなぁと思う人に向けて、「義兄弟村」「スメール男子4人組」「雷電親子」という項目があることはご注意下さい。出版前にやや炎上したからか知りませんが、懸念してた露骨なCP的な文章及び用例についてはそこまで気にならなかったです(個人の感想です)。あとは大体キャラ単独についてです。女性キャラ関連の項目目当てに書籍を入手するのは極力お勧めしません。一応原神ユーザーは男女半々な珍しいゲームと言われているのに、原神用語は男性キャラ4割弱、女性キャラ1割弱(=数個)で選ばれるのはなんだか悲しいですね。そこは著者である学生が2名だけ(出版された書籍に著者学生達の情報は全て削られてしまったが、発売発表時に公開されたサンプルには原神にあたる13章に関わった学生は2名と確認しています)で書いているので仕方ないと思っています。

※(2023/11/25追記)もう少し項目を読み直して気付いた3点を記載します。

原神界隈用語はTwitter(現X)でトレンド入りした言葉が選ばれている傾向がある

 原神界隈用語の内容として気が付いた事に、「パインアメ」などのアイテム、武器、キャラクターの通称・俗称を除くと、「えっちベルト」等公式からの投稿等に反応する形でTwitter(現X)でトレンド入りした言葉が選ばれている傾向がみられます。トレンド入りしたかまでは覚えていませんが前述の「義兄弟村」が項目にあるのも確か去年の夏か秋の期間限定イベントの影響による盛り上がりの様子について多くの人に呟かれたからではないかと思われます。Twitter(現X)で当時多くのユーザーに呟かれトレンド入りした言葉は界隈用語と言っても良いと思うのですが、そのような言葉はほぼ男性キャラ関連しかないために偏りが出来ていると思っています。ここで少しややこしいのは、前述の通りこの本は著者の癖が見え隠れするけれど、原神界隈用語はちゃんとトレンド入りした言葉も採用しているので必ずしも著者の推しだろうから項目が多めとは言いきれない点があります。例えば「えっちベルト」は当時トレンド1位を取ったようで、「アルハイゼン構文」はニュースサイトの記事にされるほどの反響だったので項目にあるのは納得ではあるけれど、著者がタルタリヤまたはアルハイゼン推しで積極的に採用したのかもしれないし、推しじゃないけれどこれが話題になったから渋々取り上げたのかもしれない。読み手は知る由もない、辞典と名のつく本で著者達の癖を考えるというがそもそも謎なのだけど。

原神用語は読みにくいし、分かりにくい

 原神界隈用語だけでは足りなかったのかパーティ編成名等の原神用語も収録されていますが、そこにも問題が見受けられます。まずゲーム内固有の単語が多いので説明時に「元素スキル」と書くだけでも〔=各キャラクターに固有の能力〕という文言が追加されて、全体の文章がとても読みにくくなっています。辞典の様式なので1ページ2段組で1行に24文字程度しか入ってなさそうなので(辞典や辞書の項目に文字数の制限があるのか専門家でないので分かりませんが)明らかに項目に充てる文字数が足りてません。感想の中で頑張って書いていると表現しましたが、説明が難しいだろう項目は正確に伝えるには正直無理があったり言葉が足りてないと感じました。

間違いと思う部分がある

 細かい日本語の指摘や著者の思想への突っ込みは挙げればきりがないですが、内容が間違っているのではないかと思う点を2点、項目を引用して説明します。

ござる [意味]稲妻 〔=ゲーム内の国家〕に所属するキャラクター・楓原万葉の愛称。万葉の特徴的な語尾の「ござる」からきている。[用例]『やっっっとござる引けた~~~~~~~』

→楓原万葉はキャラクターの背景が複雑で、短冊紹介(公式が発表した実装予定キャラクターの画像と紹介文が入った投稿)が稲妻の背景で神の目も稲妻のものであるためか大手攻略サイトでも稲妻のキャラクターとして分類しているのを実際確認していますが、「所属」と書いてしまうとゲーム内のプロフィールから分かる通り今の所属は璃月の南十字船隊となるので稲妻と書くのは間違いではないかと私は思います。ただし、楓原万葉を璃月に所属するキャラクターとして区分している事例も確認できませんでした(写真イベントで1回「璃月のキャラクター」の条件があったみたいですが、大手攻略サイトは1サイトを除いて楓原万葉を対象キャラとしてはいませんでした。楓原万葉で撮影に成功/失敗したスクショがあるか探しましたが見つかりませんでした)。話は変わりますが、引用のような感じの用例がかなりの数あって原神に限らず不要だと思うし、この本を読むのがきつく感じる理由の一つだと思います。

配布キャラ [意味]誰でも入手可能なキャラクター。…(中略)…その中でもアンバー、ガイア、リサはなぜかキャラガチャで星4ピックアップ 〔=星4の中で排出率が高いキャラクターに選ばれること〕として実装されたことがない。そのため、この三人は最も凸〔☞72ページ〕が進めにくい。凸をするためには、どんどん引き当てられるキャラクターが増えているキャラガチャですり抜ける〔=ピックアップキャラクター以外を引き当てる〕か、…(中略)…[用例]『すり抜けで配布キャラ来たんだが夢?運使い果たした?』

→こちらは明らかに間違っています。アンバー、ガイア、リサは「キャラガチャですり抜ける」形では絶対に入手できません。説明にある「キャラガチャでピックアップキャラクター以外の星4キャラがすり抜ける」という事象は「イベント祈願(ガチャ)・キャラクター」で起こることで、ガチャ詳細画面のラインナップを確認すれば分かりますがこちらのガチャには上記の三人は含まれていません。正しい表現をするならば、「凸をするためには、どんどん引き当てられる星4キャラクターが増えている「通常祈願・奔走世間(恒常ガチャ)」で運良く(ピックアップなしのいわゆる闇鍋ガチャで)入手するか、」になると思います。用例がもしガイアを当てた事を喜んで話しているのなら通常祈願回したのを勘違いしたか、本当に夢だったのかもしれない。他の配布キャラとして挙げられているバーバラや香菱などの女性キャラ達の事で喜んでいるようには思えないし。
※(2023/11/25追記終わり)

 これは本当に個人的な話ですが、恒常キャラの用例は恒常星5キャラは排出が偏るという話で実際にディルックが出ない人がジンは5凸してるという話題(愚痴)によって作り出されたのだろうけど、それを活字で出版物に書かれるとかなり堪えますね。ジン推しとして、こんな用例書いて欲しくなかった。

オタク用語辞典 大限界」という「上手い事言いました!」感を出し過ぎて、名前負けしている

 この本では、冒頭に示した「オタク」項目の引用のように、(全体的に項目よりは用例の方を大きく問題視した方が良いと思うけれど)終始一貫して著者達のやや偏った論調で書かれています。この本の最大の問題はこれが「オタク用語辞典」と銘打って大手出版社から出されたという事にあると思っています。あまり女子大生を売りにするのはどうかと思うけれど、本の帯に合わせるなら「女子大生が好きな界隈の用語について辞書形式で紹介」とか「女子大生がその界隈のオタク用語を語ってみた」程度のタイトルにすればサブカル本としては全然問題無かったと思っています。恐らく、著者達の(「限界オタク」と「大言海」、上手い事言いました!)感で盛り上がり同人誌を作ってその流れと熱量で用語辞典を銘打っての出版化の話が進んだのかな?と邪推してしまいます。序文にあるタイトルへの自信の表れと豪華な表紙デザインなどから著者達と出版社は本の中身でどんな指摘を受けようとタイトルだけは変えたくなかったのでしょう。

さいごに

 この記事の作成時には、既にファイアーエムブレムとアークナイツ界隈の有志の方が書かれた記事が作成されていて(その後ファイアーエムブレムの方はスプラトゥーンの検証もされていました)、アークナイツはサービス開始時からプレイしていてそれなりの知識は持っていると思っていますか、記事の中で問題に挙げられてる内容には賛同しかなかったです。ファイアーエムブレムは少し過去作やった程度のにわかなのでそこまで記事を読み深めてないですが、項目の検証をしっかりされていて問題点を指摘されていました。原神内容は事前の収録用語情報からある程度の偏りは想定済みだったのでオープンワールドと恒常キャラ以外はふーんそんなものかなという感じでしたが、原神界隈も検証をしっかり行う人がいたら読んでみたいなと思いました。本文が一部愚痴っぽくなってしまい申し訳ありません。読んで頂きありがとうございました。


引用元:小出祥子 編/名古屋短期大学小出ゼミ(2022・2023年度生) 著 『オタク用語辞典 大限界』(三省堂、2023年)